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不動産の遺産分割

遺産に土地や建物といった不動産が含まれる場合、相続人間で不動産をどのように遺産分割するかが、問題となります。

 

このページでは、不動産の実際の分割方法と、それに関連する課税について、詳しくご説明します。

分割方法の種類

不動産の遺産分割の方法には、次の4つがあります。

①現物分割:複数の不動産を相続人がそれぞれ相続したり、1つの土地を文筆して複数にして各相続人が相続する分割。

②代償分割:一部の相続人が不動産を取得する代わりに、他の相続人に代償金を支払う分割。代償金の支払能力が必要。

③換価分割:不動産を売却して換金し、得られた金銭を相続人間で分配する分割。

④共有分割:不動産を相続人間の共有にする分割。

 

③換価分割の方法には、競売と任意売却があります。一般に、競売よりも任意売却の方が高値での売却が見込まれます。調停では、任意売却の期間を設け、期間内に任意売却ができなかった場合には競売ができるという「競売権を付した任意売却形式」が多く採用されています。

換価分割をした場合、相続税申告期間後3年を経過する日までに譲渡した場合には、所得税の計算に当たり、相続税相当額を取得費として算入できる特例があります。

 

④共有分割は、相続人全員が共有分割を希望しそれが不当ではない場合や、対象不動産の価格が不明である場合などで利用されます。

共有分割をしても、不動産の権利を各相続人が持ち合うことになり、問題を先送りにするだけですので、特別な事情がない限り共有分割は行われません。

1つの土地の現物分割

相続人全員が同意をして、遺産である1つの土地を複数に分け(分筆といいます)、相続人間で分け合う現物分割を行うことがあります。

この分筆を行うためには、境界を明確に確定させなければなりません。そのためには、地積測量図の作成が必要となります。

また、隣地の所有者から、分筆登記について同意を得る必要もあります。

 

土地の分筆を行う場合、建築法令に注意する必要があります。分筆の仕方によっては、建物の建築ができない土地が生じ得るためです。

また、土地の分筆を行う場合、分筆後の各土地を時価評価する必要があります。土地が公道に面しているか、土地の形状、方向等によって、土地の評価額は大きくことなる可能性があります。相続人間で不公平が生じないように、適切な評価が必要です。

 

なお、この分割方法が、遺産分割の審判で採用されることは、実務上、あまりありません。

代償分割と不動産の売却に伴う課税

代償分割では、一部の相続人が不動産を取得しますが、その相続人が取得した不動産を第三者に売却する際の課税には、以下の点で注意が必要です。

第三者に不動産を売却すると、それにより得た「譲渡所得」に対し、所得税と住民税が課税されます。この「譲渡所得」は、売却金額から、「取得費」(不動産を取得する際に支払った購入代金等)と「譲渡費用」を控除して算出します。

代償分割では、不動産を取得した相続人が他の相続人に対して代償金を支払うことになりますが、この代償金は取得費にも譲渡費用にも含まれません。そのため、代償金の支払いをもって譲渡所得を圧縮することはできません。

仮に、被相続人が不動産を取得した際の取得費が分かれば、その分譲渡所得は減額となりますが、それも不明であれば、取得費に算入できる額は売却金額の5%相当額のみです。その場合、多額の所得税と住民税が課税される可能性があります。

代償分割は、こうした点も考慮したうえで行う必要があります。

なお、譲渡所得が生じると、国民健康保険や後期高齢者医療保険の保険料が増額になる可能性がある点にも、注意が必要です。

換価分割と不動産の売却に伴う課税

換価分割では、遺産である不動産を売却して現金化し、それを各相続人に分配します。

不動産を売却すると、それにより各相続人が得た「譲渡所得」に対し課税がされますが、これについては、相続人がそれぞれ確定申告をする必要があります。各相続人が不動産を売却したことになるためです。

相続税の計算上注意を要するのは、小規模宅地等の特例の適用との関係です。この特例が適用されると、相続税額を減額できますが、不動産を相続税の申告期限まで売却せずに保有することが条件となります。

したがって、小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、対象不動産の売却時期を相続税の申告期限経過後とする必要があります。

また、小規模宅地等の特例適用の条件を満たすか否かは、相続人ごとに判断されます。そのため、ある相続人には特例が適用されるものの、他の相続人には適用されないこともありますので、注意が必要です。

不動産を売却したときの譲渡所得の特別控除

前述のとおり、土地や建物の不動産を売却した際の譲渡所得に対しては、課税がされますが、一定の要件を満たすと、特例として次の特別控除を受けることができます。

①収用等により土地や建物を売却した場合

⇒5000万円の特別控除

②マイホーム(居住用財産)を売却した場合

⇒3000万円の特別控除

③被相続人の居住用財産(空き家)を売却した場合

⇒3000万円の特別控除

④低未利用土地等を譲渡した場合

⇒100万円の長期譲渡所得の特別控除

⑤平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合

⇒1000万円の特別控除

 

これらの特例の適用を受ける要件を満たすかについては、慎重な確認が必要です。

不動産を遺産分割する際には、これらの特例も念頭に置くと良いでしょう。

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